Healthcare Start-Up

BIOTICSai:出生前・胎児超音波検査AIを開発するヘルスケアスタートアップ

スタートアップメディアのTechCrunch主催で、サンフランシスコで毎年開催されるテックカンファレンス「Disrupt」では、スタートアップのピッチバトルである「Startup Battlefield」がメインイベントとなっています。

本記事では、2023年のStartup Battlefieldで優勝を果たしたヘルスケアスタートアップ「BIOTICSai」に焦点を当て、その取り組みについて紹介します。

BIOTICSai 基本情報

会社設立年2020
本社所在地アメリカ合衆国 カリフォルニア州 オークランド
プロダクト出生前・胎児超音波検査AI
従業員数6名 (2023年9月)
直近投資ラウンドPre-Seed (2023年9月)
累計資金調達額不明
既存投資家Techstars, Blackbird Ventures

BioticsAIは、アメリカ・カリフォルニア州のオークランドに本拠を置くヘルスケアスタートアップです。

この企業は、2023年のTechCrunch DisruptのStartup Battlefieldで優勝し、その存在感を大きく示しました。

こちらが、Startup BattlefieldにおけるBioticsAIのピッチ動画です。

Pre-Seedラウンドのアーリーステージのスタートアップとなります。

米国の著名なアクセラレーターであるTechstarsから投資を受けています。

創業者

BioticsAI創業者; Salman Khan(左), Robhy Bustami(右)
(画像出展元はこちら)

BIOTICSai社のCEO兼創業者であるRobhy Bustami氏は、産婦人科医の母を持ち、さらに叔父と叔母も産婦人科関連の職に従事する家庭環境で育ちました。

その環境から、産婦人科領域における多くの課題が身近にあったそうです。

また、彼自身も早い時期からプログラミングに興味を持ち、9歳の頃からその道を歩み始めました。

BIOTICSaiの設立前にはIBMでAIエンジニアとしての経験を積み重ねました。

しかし、彼のルーツが産婦人科に深く関連していたことから、産婦人科領域に存在する課題に対する関心は変わらずに持ち続けていました。

その背景から、産婦人科を取り巻く複雑な問題に対処し、革新的なソリューションを提供するためにBIOTICSaiを創業しました。

BIOTISCaiが取り組む課題

多くの国や地域において、産婦人科医の不足が深刻な課題となっています。

世界保健機関(WHO)は出生前の超音波診断プロセスを設計していますが、こうした地域では産婦人科医を含む医療従事者の不足により、出生前診断を通じて胎児の奇形や重大な疾患が見過ごされるケースが多発しています。

出典;https://www.youtube.com/watch?v=lVNXSSepRXo

同社の調査によれば、奇形や重大な疾患を持つ胎児の50%が、出生前超音波検査の誤診断によって見逃されているという衝撃的な事実が浮かび上がっています。

さらに、世界中で毎年1億人の妊婦が、施設や医療従事者の不足のために適切な出生前超音波診断を受けることができない状況にあります。

こうした深刻な問題に立ち向かうために、BIOTICSaiはAIを駆使し、超音波診断の結果をスクリーニングし、自動的にレポートを生成する手法を導入しています。

これにより、誤診断を防ぎ、医師の作業効率を向上させ、出生前診断の精度とスピードを向上させることが期待されます。

プロダクト

出典;https://www.youtube.com/watch?v=lVNXSSepRXo

BIOTICSaiは、AIを駆使して出生前の超音波診断の誤診断を防ぐためのプラットフォームを展開しています。

同社のプラットフォームは、クラウドベースのSaaSプラットフォームであり、市場に存在する多くの超音波計測デバイスや医療画像取得デバイスと統合可能な標準APIを提供しています。

BIOTICSai. ユーザインターフェース
(出典;https://www.youtube.com/watch?v=lVNXSSepRXo)

超音波計測器から送信された国際規格に準拠したさまざまな角度からの診断画像を、BIOTICSaiのAIアルゴリズムが画像解析を行います。

これにより、奇形や問題の兆候を検出し、それをプラットフォーム上でマーキングおよび通知し、医師の診断をサポートする役割を果たします。

この過程において、AIは医療の正確性と迅速性を向上させ、診断プロセスに変化をもたらしています。

このユーザインターフェイスのサンプル画像では、胎児の脊椎に奇形があり、奇形箇所を医師が発見しやすいようマーキングされる。
(出典;https://www.youtube.com/watch?v=lVNXSSepRXo))

同社によれば、現在の段階では96%の精度で診断を行うことが可能とされています。

これまでに8つの医療機関で試験運用を行い、約800万枚もの診断データを収集・保持しており、この膨大なデータセットが高い精度を実現する要因となっています。

さらに、診断結果の自動生成も行われています。通常、医師は患者1人あたり約8分かかるとされるレポートの作成に時間を費やしていますが、BIOTICSaiの自動生成機能により、医師の作業効率が大幅に向上します。

市場規模

同社は、出生前超音波診断の分野を越えて、泌尿器科、婦人科、新生児科など、関連領域の診断にも展開し、最終的にはリプロダクティブヘルス(性と生殖に関連する健康領域)全般にわたり、同社のAIを活用した画像診断を提供する予定です。

このリプロダクティブヘルス分野全体をターゲットにすると、その市場規模は世界全体で91億ドル(約1兆3,500億円)に上ると見込まれています。

この野心的な展望は、同社が革新的な医療技術をリプロダクティブヘルス領域に導入し、この重要な分野に新たな貢献をもたらすことを示唆しています。

まとめ

日本においても、産婦人科医の数が20年前から減少傾向にあり、少子化や医療訴訟などの要因が影響して、その総数は約15%減少しています。加えて、医療関係者の激務が問題視されており、これらの課題を克服するためのソリューションへの需要が高まっています。

BIOTICSaiのソリューションは、日本を含む世界中の妊婦にとって、精度の高い出生前診断を提供する環境を整え、安心・安全な出産を実現する一助となることが期待されます。

技術の進歩と医療の向上により、未来の産科医療はより効果的で、患者にとっても信頼性の高いものとなるでしょう。

BIOTICSaiの貢献が、妊婦と医療従事者の両方にとって革新的な変化をもたらすことが期待されます。

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